土地の取得当初は、電気も光回線も通っていない状態から生活を構築する必要がありました。現在の「安定したインフラを使い倒す」という方針に至るまでには、いくつかの限定的なリソースを組み合わせた試行錯誤の時期があります。
1. 現場での電力調達:太陽光とバイク
初期の主電力は、小規模な太陽光パネルとポータブル電源でした。しかし、私の山林土地は日当たりが悪く、自力での発電量には限界がありました。
- 太陽光エネルギーの不足: 天候に左右されやすく、曇天が続くとPCの充電すらままならなくなります。バッテリー残量がそのまま作業可能時間に直結する環境でした。
- バイクからの給電: 補完的な手段として、110ccのスーパーカブのアクセサリ電源から充電を試みたこともあります。
- 充電のためのアイドリング: 走るわけでもないのに、ただ充電のためだけに消費されるガソリン。静かな山の中で響くアイドリング音を聴きながら、エネルギーを変換することの非効率さを肌で感じました。結局、この方法は数回試行した後に主要な選択肢からは外しました。
2. 街のインフラを「生活のバックアップ」として使う
自前での電力確保が困難な場合、街のインフラを自身の生活圏の「外付け資源」として活用していました。
- 潤沢な電気とネットの利用: 確実にPC作業やリモートワークを行う際は、片道15分かけて街のカフェやコワーキングスペースへ移動しました。山での「居住」と街での「通信・電力」を使い分けるスタイルです。
- 不自由さから「鈍感さ」の獲得: 電力量の制約から、やむを得ず仕事を先延ばしにすることもありました。しかし、この不自由な状況下で「これが自分の生活なのだから仕方がない」と受け入れる経験を通じ、ある種の鈍感さや図太さを得られたことは大きな収穫だったかもしれません。
3. インフラ引き込みの判断基準
土地のすぐ近くに電柱という文明の導線がある中で、それをあえて使わずにオフグリッドを継続することは、合理性よりも「痩せ我慢」に近い感覚がありました。
インフラ未整備の土地でも、契約さえすれば電気や光回線という安定したリソースにアクセスできる。その贅沢さと、生活を「最小構成」で安定稼働させるメリットを天秤にかけた結果、自給に固執せず既存システムを最大効率で利用する現在の形へと移行しました。
結論:自給からハックへ
できるだけ自前で全てを賄おうとした経験から、現在の「壁から無限に電気が供給され、常時ネットに接続されている」環境の価値を再認識できました。
不自由な環境で得た精神的な図太さを持ちつつ、利用可能な社会システムは最大効率で使い倒す。薪や井戸水といった「自然からの採集」と「文明の戦略的ハック」を組み合わせることで、現在のハイブリッドな暮らしは成り立っています。